人が減っているのに、土地が上がる

2026-08-09 公開 / 使用データ: 国土交通省「地価公示」2026年(令和8年)1月1日時点・総務省「国勢調査」2025年

「人口が減れば土地は余る。余れば安くなる」——直感的にはそのとおりです。実際に確かめてみました。

人口と地価の両方のデータが揃う1,356市区町村のうち、2020年から2025年にかけて人口が減った市区町村は1,198。そのうち地価が上がっていたのは490、割合にして41%でした。

4割です。例外と呼ぶには多すぎます。「人口が減れば地価も下がる」は、統計的に成り立っていません。

上昇率トップは、3つのタイプに分かれる

人口が減りながら地価が上がった市区町村を、上昇率の高い順に並べます。

人口減少かつ地価上昇の市区町村 上位15
順位市区町村人口増減
(2020→2025)
地価変動
(前年比)
中央値
(円/m²)
調査
地点
タイプ
1白馬村長野県-2.1%+26.90%27,4003リゾート
2野沢温泉村長野県-11.2%+21.70%29,3502リゾート
3本部町沖縄県-5.6%+15.55%42,5002リゾート
4目黒区東京都-0.6%+13.40%1,340,00049東京都心
5千代田区東京都-0.7%+12.55%4,330,00059東京都心
6軽井沢町長野県-3.8%+12.49%66,1508リゾート
7渋谷区東京都-2.0%+12.33%2,485,00058東京都心
8倶知安町北海道-2.4%+12.32%124,0004リゾート
9宮古島市沖縄県-1.7%+12.30%50,2508リゾート
10松戸市千葉県-0.3%+8.74%182,00087大都市近郊
11篠栗町福岡県-0.3%+8.40%89,5007大都市近郊
12国分寺市東京都-0.8%+7.51%390,00023大都市近郊
13鎌ケ谷市千葉県-0.7%+7.47%105,00020大都市近郊
14国立市東京都-0.7%+7.43%391,00015大都市近郊
15志免町福岡県-2.1%+7.30%104,0007大都市近郊

きれいに3つに分かれました。

住む人が減っていることは共通していても、値段を押し上げている力はそれぞれ違います。とくに極端なのが1つ目です。

白馬村の「+26.9%」を分解する

白馬村の人口は5年で-2.1%。それでいて地価は+26.90%上がっています。ただしこの村の調査地点はわずか3地点です。中身を見てみます。

白馬村の地価公示調査地点
用途価格(円/m²)前年比所在地
商業地40,300円+35.2%長野県 北安曇郡白馬村大字北城字山越4093番2
住宅地27,400円+33.0%長野県 北安曇郡白馬村大字北城字堰別レ827番36
住宅地8,970円+12.5%長野県 北安曇郡白馬村大字北城7257番

3地点の前年比を平均すると26.90%。当サイトが市区町村の「地価変動」として出しているのは、この調査地点ごとの前年比の平均です。

⚠ 国土交通省の発表と数字が違うのは、定義が違うからです。

国土交通省は令和8年地価公示で、住宅地の上昇率 全国1位は白馬村の+33.0%と発表しました。これは上の表の2行目、特定の1地点の数字です。当サイトの+26.90%は3地点の平均なので、同じ村の話でも値が変わります。

どちらが正しいという話ではありません。「何を平均したのか」を確認せずに順位だけ引用すると、こういうズレが起きます。

もう1つ、野沢温泉村も見ておきます。こちらは2地点で、いずれも住宅地です。

用途価格(円/m²)前年比所在地
住宅地34,000円+22.3%長野県 下高井郡野沢温泉村大字豊郷字蟹沢7886番10
住宅地24,700円+21.1%長野県 下高井郡野沢温泉村大字豊郷字八幡下6513番外

人口が-11.2%——5年で1割以上減っている村で、2地点とも20%超の上昇です。

なぜリゾート地の土地が上がるのか

国土交通省の令和8年地価公示によれば、全用途平均は5年連続の上昇で、住宅地の上昇率は白馬村が全国1位(+33.0%)、次いで富良野市(+30.0%)、野沢温泉村(+22.3%)でした。いずれも当サイトの集計でも上位に入っている地域です。

報道されている背景は、おおむね次のように整理できます。

倶知安町のデータはこの見方と整合します。同町で最も高い住宅地はニセコひらふ5条3丁目の200,000円/m²で、これは白馬村の最高地点(40,300円/m²)の5倍近い水準です。先に上がった場所と、これから上がる場所の差と読むこともできます。

ただし、ここから先は当サイトのデータでは検証できません。誰がどこから買っているのかは、地価公示には載っていない情報です。

逆はほとんど起きない

では反対に、「人口が増えているのに地価が下がっている」市区町村はどれくらいあるでしょうか。

調査地点が10以上ある市区町村に限ると、該当は1件だけです(岐阜県瑞穂市・人口+0.5%・地価-0.01%)。しかも下落幅はごくわずかです。

つまり関係は非対称です。人口が増えている場所の地価はほぼ確実に上がる。しかし人口が減っている場所の地価は、上がることも下がることもある。人口は地価を押し上げる要因ではあっても、押し下げる決定打ではないということになります。

外れた仮説:「調査地点が少ないほど数字はブレる」

白馬村3地点、野沢温泉村2地点、本部町2地点。上位が軒並み少数地点なので、「地点が少ない自治体ほど変動率が極端に出るのではないか」と考えて計算してみました。

調査地点数市区町村数変動率の標準偏差最大の上昇率
1〜4地点5152.58+26.90%
30地点以上1933.75+18.16%

外れました。ばらつき(標準偏差)はむしろ地点が多いグループのほうが大きく、2.58対3.75です。地点が少ない自治体の多くは地価が動いておらず、平均すると静かなのです。

ただし最も極端な値は少数地点の自治体から出ています(最大の上昇率は1〜4地点グループの+26.90%)。「少数地点だから全部あてにならない」でもなく、「地点数は気にしなくていい」でもない。ランキングの上位を見るときは、その自治体が何地点で測られているかを確認する——それが正しい距離の取り方です。当サイトが各ページに地点数を必ず表示しているのはこのためです。

まとめ

指標の定義についてはこのサイトの数字を、そのまま信じないでくださいに、ランキングの読み方については「全国1位」の正体にまとめています。

関連ページ

データ出典

地価の「変動」は、各市区町村の調査地点ごとの前年比を単純平均した値です。公示価格は毎年1月1日時点の正常な価格であり、実際の取引価格とは異なります。リゾート地の地価上昇の背景に関する記述は、国土交通省の公表資料および報道各社の記事にもとづく整理であり、当サイトが独自に確認したものではありません。