「全国1位」の正体 — 絶対数ランキングは、たいてい人口ランキングでしかない

2026-08-09 公開 / 使用データ: 総務省消防庁「熱中症による救急搬送状況」2025年5〜9月・総務省「国勢調査」2025年

2025年5〜9月に熱中症で救急搬送された人は、全国で100,510人でした。都道府県別で最も多かったのは東京都の9,315人です。

この「全国1位」に、どれだけの意味があるでしょうか。

東京都の人口は14,246,219人で、これも全国1位です。人口が最も多い都道府県で、搬送者数も最も多い。当たり前すぎて、何も分かりません。

人口10万人あたりに直すと、景色が変わります。

指標東京都鳥取県
搬送者数9,315人(全国1位)602人(全国47位)
人口10万人あたり65.4人(44位114.9人(7位

1位だった東京都は44位に落ち、最下位だった鳥取県は7位に上がります。順位差にして東京都が43、鳥取県が40。同じデータを見ているのに、結論がほぼ逆になります。

47都道府県・人口10万人あたりの搬送者数

当サイトの熱中症マップは搬送者数(絶対数)で順位を出しているため、人口あたりの一覧はサイト内のどこにもありません。ここに掲載します。

都道府県別 人口10万人あたり熱中症救急搬送者数(2025年5〜9月)
順位都道府県10万人あたり搬送者数絶対数順位高齢化率
1大分県128.31,3822733.1%
2岡山県124.02,2431330.2%
3奈良県121.51,5422231.6%
4佐賀県119.89363730.6%
5鹿児島県119.21,8031732.4%
6愛媛県115.81,4592633.0%
7鳥取県114.96024732.2%
8和歌山県114.49893433.2%
9徳島県111.97564034.0%
10香川県110.71,0053231.7%
11高知県109.97074235.3%
12島根県106.06674534.0%
13群馬県104.81,9581530.0%
14沖縄県103.01,5132522.6%
15宮崎県102.71,0463132.5%
16熊本県102.01,7121931.1%
17岐阜県99.91,8891630.3%
18福島県99.21,6982031.6%
19三重県97.21,6482129.7%
20長崎県96.71,1912932.9%
21京都府91.92,3011129.3%
22石川県90.49843529.4%
23愛知県89.36,653325.3%
24福井県88.76474630.6%
25岩手県88.79983333.4%
26山梨県88.66914430.7%
27茨城県87.52,4421029.4%
28兵庫県86.64,610629.2%
29山形県85.98533933.7%
30広島県85.52,2951229.2%
31埼玉県84.36,141426.9%
32大阪府82.27,202227.6%
33青森県81.29263833.7%
34栃木県81.21,5142329.0%
35滋賀県81.01,1283026.2%
36宮城県80.81,7991827.9%
37秋田県79.26994337.3%
38山口県75.59543634.5%
39福岡県74.93,808827.7%
40新潟県73.21,5142432.7%
41富山県72.67164132.5%
42長野県69.11,3512831.9%
43千葉県68.64,292727.4%
44東京都65.49,315122.7%
45静岡県64.32,2321430.0%
46北海道54.72,727931.9%
47神奈川県54.14,972525.5%

全国平均は10万人あたり81.7人。最多の大分県(128.3人)と最少の神奈川県(54.1人)で2.37倍の差があります。

絶対数では5位だった神奈川県が47位、9位だった北海道が46位。逆に、人数が少ないために目立たなかった中国・四国・九州の県が上位に並びます。

では、何がこの差を生んでいるのか

最初に思いつくのは高齢化です。高齢者は熱中症になりやすいと言われますし、上位には高齢化率の高い県が目立ちます。

ただし、当サイトのデータで計算すると高齢化率と10万人あたり搬送者数の相関係数は r = +0.314にとどまります。弱い〜中程度の正の相関で、これだけでは説明しきれません。

実際、はっきりした反例が2つあります。

都道府県高齢化率10万人あたり搬送者数
秋田県37.3%(全国最高79.2人(37位)
沖縄県22.6%(全国最低103.0人(14位)

高齢化率が全国で最も高い秋田県は37位、最も低い沖縄県は14位。順序が逆です。高齢化だけで説明しようとすると、この2県で破綻します。

気候の影響は当然大きいと考えられますが、単純に「暑い地域ほど多い」でもありません。労働安全衛生総合研究所の解説によれば、同じ人数が搬送される暑さ指数(WBGT)には地域差があり、7〜17歳では北海道と東京都で最大4.5℃、65歳以上では北海道と沖縄県で最大3.9℃の差があるとされています。つまり地域によって「倒れる暑さ」自体が違うということです。同解説はまた、65歳以上は18〜64歳よりWBGTが2.6℃低くても同じ人数が搬送される、としています。

このほか、エアコンの普及状況、屋外で働く人の割合、高齢者の単身世帯率、救急搬送の運用の違いなども考えられます。ただし、これらは当サイトが持っているデータでは検証できません。ここから先は推測であり、この記事では結論を出しません。

当サイトの中でも、基準は揃っていない

正直に書きます。当サイトは指標によって、絶対数で順位をつけているページと、人口あたりで順位をつけているページが混在しています。

アプリページに表示している順位
人口推移マップ高齢化率(率)
熱中症マップ搬送者数(絶対数)

率で順位をつけているページでは、人口の多い都府県が必ずしも上位に来ません。逆に絶対数で順位をつけているページでは、この記事で見たとおり、上位はおおむね人口順に並びます。同じサイトの中でも、ページによって見ているものが違うということです。

熱中症マップに人口あたりの表示を追加するかどうかは検討中です。この記事の一覧が、当面その代わりになります。

まとめ:ランキングを見たら3つ確認する

そして、当サイトのデータを都道府県別に集計するときの注意点はこちらの記事にまとめています。国勢調査のデータには政令指定都市の「市」と「区」が両方入っているため、単純に合計すると人口が過大になります。

関連ページ

データ出典

人口10万人あたりの数値は、当サイトが国勢調査2025年の市区町村人口(1,741件)を都道府県ごとに合計して算出したものです。高齢化率は2020年国勢調査にもとづく人口加重平均です。