子どもが多い街は、豊かな街なのか — 相関係数1つでは答えが出ない

2026-08-11 公開 / 使用データ: 総務省「国勢調査」2025年(人口)・2020年(年齢3区分)、総務省「市町村税課税状況等の調」2023年度課税(2022年の所得)

子育て世帯が集まる街は、所得も高いのでしょうか。それとも所得の高い街ほど、子どもは少ないのでしょうか。

当サイトには人口推移マップ所得マップがあります。両方のデータが揃う1,740市区町村で、15歳未満の割合と1人あたり所得の関係を計算してみます。

全国で計算すると、弱い正の相関

相関係数は r = +0.252 でした。強くはありませんが正の値です。「子どもの割合が高い市区町村ほど、所得もやや高い傾向がある」と読めます。

中央値は、15歳未満の割合が11.2%、1人あたり所得が297.6万円です。

ここで話を終えると、答えは「子どもが多い街は、やや豊かな傾向がある」になります。しかし人口規模で区切ると、様子が変わります。

人口20万人以上だけ、符号が反転する

人口規模別に見た15歳未満の割合と1人あたり所得の相関
人口規模市区町村数相関係数15歳未満
(中央値)
1人あたり所得
(中央値)
1万人未満564+0.2019.8%279.6万円
1万〜5万人672+0.36411.1%289.8万円
5万〜20万人374+0.19612.2%322.8万円
20万人以上130-0.12611.9%363.7万円

人口20万人以上の130市区町村だけで計算すると r = -0.126符号が逆になります。この層では「子どもが多いほど所得が低い」という、全国とは反対の関係が現れます。

中身を見ます。

人口20万人以上で15歳未満の割合が高い市区町村 上位6
市区町村都道府県15歳未満1人あたり所得2025年人口
流山市千葉県15.7%415.4万円215,130
那覇市沖縄県14.6%337.8万円311,073
つくば市茨城県14.4%427.1万円268,991
岡崎市愛知県14.1%380.4万円377,608
豊中市大阪府13.7%444.7万円404,479
茨木市大阪府13.6%394.2万円287,098

子どもの割合が高い側は、所得も高い自治体が並びます。流山市は15.7%で所得415.4万円。全国中央値の297.6万円を大きく上回ります。

人口20万人以上で15歳未満の割合が低い市区町村 下位6
市区町村都道府県15歳未満1人あたり所得2025年人口
新宿区東京都8.4%620.5万円361,634
中野区東京都8.5%466.5万円355,333
豊島区東京都8.8%495.9万円306,106
台東区東京都8.8%482.2万円228,390
函館市北海道9.4%303.7万円230,498
渋谷区東京都9.4%1073.7万円239,119

低い側は、6件のうち5件が東京23区です。所得は466.5万円から1073.7万円と、いずれも全国中央値の1.5倍以上あります。相関の符号を反転させていたのは、この層でした。

東京23区だけを並べると

23区は所得の水準が全国とかけ離れているため、単独で見ます。15歳未満の割合が低い順です。

東京23区の15歳未満の割合と1人あたり所得
順位15歳未満1人あたり所得
1新宿区8.4%620.5万円
2中野区8.5%466.5万円
3豊島区8.8%495.9万円
4台東区8.8%482.2万円
5渋谷区9.4%1073.7万円
6杉並区10.0%515.8万円
7板橋区10.3%397.7万円
8北区10.3%412.5万円
9墨田区10.3%423.5万円
10大田区10.3%464.4万円
11足立区10.9%375.1万円
12目黒区11.0%716.7万円
13品川区11.1%557.0万円
14荒川区11.3%414.6万円
15葛飾区11.4%375.4万円
16練馬区11.4%447.4万円
17世田谷区11.6%619.8万円
18文京区11.7%707.2万円
19江戸川区12.4%398.2万円
20江東区12.7%498.6万円
21港区13.3%1396.8万円
22千代田区13.5%1121.3万円
23中央区13.6%780.8万円

最も低い新宿区が8.4%、所得は620.5万円。所得が最も高い港区(1396.8万円)は13.3%です。23区内でも、所得の高さと子どもの多さは同じ方向を向いていません。

都道府県の中央値で見ると、さらに弱くなる

市区町村ではなく、都道府県ごとの中央値どうしで相関を取ると r = +0.157 です。全国の市区町村で計算した+0.252よりも弱くなります。

都道府県ごとの15歳未満の割合と1人あたり所得の中央値(上位5・下位5)
都道府県15歳未満
(中央値)
1人あたり所得
(中央値)
市区町村数
沖縄県16.7%277.1万円41
愛知県13.4%354.5万円54
滋賀県13.2%316.4万円19
佐賀県13.2%285.1万円20
福岡県13.1%289.1万円60
北海道9.9%309.5万円179
奈良県9.7%307.0万円39
青森県9.6%263.1万円40
高知県9.4%262.9万円34
秋田県8.6%262.1万円25

子どもの割合が最も高い沖縄県は16.7%ですが、所得の中央値は277.1万円です。最も低い秋田県は8.6%で、所得も262.1万円。両端が同じ方向に動いていません。

4つに分けてみる

相関係数という1つの数字に潰さず、中央値(15歳未満11.2%/所得297.6万円)で4つに分けます。それぞれの人口増減率(2020→2025)の中央値を並べました。

子どもの割合と所得の組み合わせ別に見た市区町村数と人口増減率
組み合わせ市区町村数人口増減率
(中央値・2020→2025)
子どもが多く、所得も高い598-2.4%
子どもが多く、所得は低い272-6.3%
子どもが少なく、所得は高い270-7.7%
子どもが少なく、所得も低い600-10.4%

4つとも人口は減っていますが、減り方の差は8.1ポイントあります。子どもが多く所得も高い群が最も緩やかで、子どもが少なく所得も低い群が最も急です。相関係数では見えなかった順序が、こう分けると出てきます。

この記事の結論は「答えが1つに決まらない」です。 同じデータから「子どもが多い街は豊か(r=+0.252)」とも 「子どもが多い街は所得が低い(r=-0.126)」とも言えてしまいます。 どちらも計算は正しく、どちらか一方だけを示せば読み手を誤らせます。

この記事のデータについて

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市区町村ごとの数字は人口推移マップ所得マップで確認できます。