高齢化率が最も低い自治体はどこか — 率という指標が映してしまうもの

2026-08-10 公開 / 使用データ: 総務省「国勢調査」2025年(人口)・2020年(年齢3区分)・2010年

全国の高齢化率は28.4%か、35.0%か

日本の高齢化率——65歳以上が人口に占める割合——を1つの数字で言うと、いくつになるでしょうか。

当サイトのデータで計算すると、28.4%になります。全国1,740市区町村の65歳以上を全部足して、総人口123,049,313人で割った値です。

ところが、同じデータで35.0%という数字も出せます。1,740市区町村それぞれの高齢化率を、単純に平均した値です。中央値は34.7%。

どちらも計算は正しく、しかし6.6ポイント違います。前者は「国民ひとりを1票と数えた平均」、後者は「自治体ひとつを1票と数えた平均」です。人口の少ない自治体ほど高齢化率が高いので、自治体を平等に数えると値が上に振れます。

この記事は、その「率」という指標を、低い側から順に見ていきます。

高齢化率が低い順に並べると

高齢化率が低い市区町村 上位15(2020年国勢調査)
順位市区町村65歳以上15歳未満2025年人口人口増減
(2020→2025)
1大熊町10.3%0.1%1,534+81.1%
2小笠原村14.1%14.2%2,711-7.4%
3中央区14.6%13.6%181,918+7.5%
4千代田区16.4%13.5%66,199-0.7%
5港区16.7%13.3%272,662+4.7%
6戸田市17.0%14.3%139,164-1.2%
7長久手市17.2%16.9%63,385+5.4%
8浦安市17.7%12.6%172,764+0.8%
9粕屋町17.9%17.9%48,506+0.7%
10和光市18.0%13.6%83,636-0.4%
11御蔵島村18.0%18.6%291-9.9%
12青ヶ島村18.3%12.4%168-0.6%
13新宮町18.4%20.7%32,195-2.2%
14渋谷区18.6%9.4%239,119-2.0%
15みよし市18.6%14.5%61,452-0.8%

この15件には、性質のまったく違う3種類が混ざっています。ひとつは都心。中央区・千代田区・港区・渋谷区が並びます。もうひとつは新しい住宅地で、戸田市・長久手市・浦安市・粕屋町・和光市・みよし市がこれにあたります。3つめは離島で、小笠原村・御蔵島村・青ヶ島村が入っています。

そして先頭には、それらのどれとも違う町があります。

大熊町の10.3%が意味していること

大熊町の高齢化率は10.3%で、1,740市区町村のうち最も低い値です。2位の小笠原村(14.1%)とも3.8ポイント離れています。

ただしこの数字を「若い町」と読むことはできません。同じ2020年国勢調査で、15歳未満の割合は0.1%です。高齢者も子どももほとんどいない、という状態を「高齢化率が低い」と表現しているにすぎません。

背景には東京電力福島第一原子力発電所の事故があります。大熊町の国勢調査人口は、2010年の11,515人から、2015年には調査上0人となり、2020年は847人でした。この847人という母数に対する割合が、10.3%です。2025年の人口は1,534人まで戻っていますが、これは2010年の13.3%にあたります。

当サイトのランキングも、この数字をそのまま並べています。 高齢化率のランキングは大熊町を最下位(=最も低い)に置きますし、 人口増加率のランキングでは上位に並びます。 どちらも計算は正しく、そして単独で読むと実態を取り違えます。

反対側 — 50%を超える60の自治体

高い側を見ます。高齢化率が50%以上、つまり住民の半数以上が65歳以上という市区町村は60件、全体の3.4%です。最も高いのは南牧村の65.2%でした。

高齢化率が高い市区町村 上位10(2020年国勢調査)
順位市区町村65歳以上2025年人口人口増減
(2020→2025)
1南牧村65.2%1,273-21.0%
2天龍村62.1%965-18.1%
3神流町61.5%1,298-21.1%
4金山町60.9%1,634-12.2%
5御杖村60.5%1,226-17.1%
6大豊町58.7%2,761-15.1%
7東吉野村58.3%1,281-14.7%
8飯舘村57.5%1,373+4.2%
9上関町56.4%1,893-19.2%
10上勝町55.9%1,193-13.6%

60件のうち、2020年から2025年にかけて人口が増えたのは1件だけです(表では色を変えています)。残りはすべて減っており、中央値は-15.6%、最も減った自治体で-34.0%でした。

母数が小さいほど、率は暴れる

ここまでの上位・下位に共通しているのは、人口の少なさです。人口規模で区切って、高齢化率の散らばりを比べます。

人口規模別に見た高齢化率の散らばり
人口規模件数中央値最小最大
5千人未満31942.4%10.3%65.2%55.0pt
5千〜1万人24539.2%19.6%53.6%34.0pt
1万〜5万人67235.6%17.9%54.6%36.7pt
5万〜20万人37429.6%14.6%43.6%29.0pt
20万人以上13026.9%16.7%36.0%19.3pt

人口が少ないほど中央値が高く、かつ幅が広くなります。ランキングの端に小さな自治体ばかりが並ぶのは、そこで何か特別なことが起きているからとは限りません。母数が小さければ、率は同じ人数の増減で大きく動きます。

人口10万人以上に限って高い順に並べると、顔ぶれが変わります。

人口10万人以上で高齢化率が高い市区町村 上位8
順位市区町村65歳以上2025年人口人口増減
(2020→2025)
1小樽市41.2%100,404-9.8%
2大牟田市37.6%101,941-8.4%
3一関市37.0%101,916-8.9%
4尾道市36.5%120,346-8.3%
5函館市36.0%230,498-8.2%
6岩国市36.0%119,618-7.4%
7今治市35.8%141,735-6.6%
8下関市35.8%237,892-6.7%

最も高い小樽市でも41.2%で、50%を超える自治体は1つもありません。8件すべてで人口が減っています。

同じ県内でも、位置はばらばらになる

原発事故で避難指示が出た福島県の市町村を、高齢化率の低い順に並べます。順位は1,740市区町村中の、高い順の順位です。

福島県の避難指示が出た市町村の高齢化率と人口
市町村65歳以上
(2020)
高い順の順位2010年人口2025年人口2010年比
大熊町10.3%1740位11,5151,53413.3%
富岡町24.2%1604位16,0012,89018.1%
広野町29.7%1274位5,4184,78388.3%
浪江町32.2%1063位20,9052,57312.3%
楢葉町37.8%623位7,7004,54359.0%
葛尾村47.1%111位1,53141927.4%
川内村48.0%95位2,8201,70560.5%
飯舘村57.5%8位6,2091,37322.1%

同じ経緯をたどった市町村が、高齢化率という1つの指標の上では1,740件の端から端まで散らばります。避難指示の解除時期、戻った世代の構成、もともとの人口規模が違うためです。この表を高齢化率の順に並べる限り、そこに共通の事情があることは見えません。

この記事のデータについて

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データそのものは人口推移マップで市区町村ごとに確認できます。