高齢化率が最も低い自治体はどこか — 率という指標が映してしまうもの
全国の高齢化率は28.4%か、35.0%か
日本の高齢化率——65歳以上が人口に占める割合——を1つの数字で言うと、いくつになるでしょうか。
当サイトのデータで計算すると、28.4%になります。全国1,740市区町村の65歳以上を全部足して、総人口123,049,313人で割った値です。
ところが、同じデータで35.0%という数字も出せます。1,740市区町村それぞれの高齢化率を、単純に平均した値です。中央値は34.7%。
どちらも計算は正しく、しかし6.6ポイント違います。前者は「国民ひとりを1票と数えた平均」、後者は「自治体ひとつを1票と数えた平均」です。人口の少ない自治体ほど高齢化率が高いので、自治体を平等に数えると値が上に振れます。
この記事は、その「率」という指標を、低い側から順に見ていきます。
高齢化率が低い順に並べると
| 順位 | 市区町村 | 65歳以上 | 15歳未満 | 2025年人口 | 人口増減 (2020→2025) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 大熊町 | 10.3% | 0.1% | 1,534 | +81.1% |
| 2 | 小笠原村 | 14.1% | 14.2% | 2,711 | -7.4% |
| 3 | 中央区 | 14.6% | 13.6% | 181,918 | +7.5% |
| 4 | 千代田区 | 16.4% | 13.5% | 66,199 | -0.7% |
| 5 | 港区 | 16.7% | 13.3% | 272,662 | +4.7% |
| 6 | 戸田市 | 17.0% | 14.3% | 139,164 | -1.2% |
| 7 | 長久手市 | 17.2% | 16.9% | 63,385 | +5.4% |
| 8 | 浦安市 | 17.7% | 12.6% | 172,764 | +0.8% |
| 9 | 粕屋町 | 17.9% | 17.9% | 48,506 | +0.7% |
| 10 | 和光市 | 18.0% | 13.6% | 83,636 | -0.4% |
| 11 | 御蔵島村 | 18.0% | 18.6% | 291 | -9.9% |
| 12 | 青ヶ島村 | 18.3% | 12.4% | 168 | -0.6% |
| 13 | 新宮町 | 18.4% | 20.7% | 32,195 | -2.2% |
| 14 | 渋谷区 | 18.6% | 9.4% | 239,119 | -2.0% |
| 15 | みよし市 | 18.6% | 14.5% | 61,452 | -0.8% |
この15件には、性質のまったく違う3種類が混ざっています。ひとつは都心。中央区・千代田区・港区・渋谷区が並びます。もうひとつは新しい住宅地で、戸田市・長久手市・浦安市・粕屋町・和光市・みよし市がこれにあたります。3つめは離島で、小笠原村・御蔵島村・青ヶ島村が入っています。
そして先頭には、それらのどれとも違う町があります。
大熊町の10.3%が意味していること
大熊町の高齢化率は10.3%で、1,740市区町村のうち最も低い値です。2位の小笠原村(14.1%)とも3.8ポイント離れています。
ただしこの数字を「若い町」と読むことはできません。同じ2020年国勢調査で、15歳未満の割合は0.1%です。高齢者も子どももほとんどいない、という状態を「高齢化率が低い」と表現しているにすぎません。
背景には東京電力福島第一原子力発電所の事故があります。大熊町の国勢調査人口は、2010年の11,515人から、2015年には調査上0人となり、2020年は847人でした。この847人という母数に対する割合が、10.3%です。2025年の人口は1,534人まで戻っていますが、これは2010年の13.3%にあたります。
当サイトのランキングも、この数字をそのまま並べています。 高齢化率のランキングは大熊町を最下位(=最も低い)に置きますし、 人口増加率のランキングでは上位に並びます。 どちらも計算は正しく、そして単独で読むと実態を取り違えます。
反対側 — 50%を超える60の自治体
高い側を見ます。高齢化率が50%以上、つまり住民の半数以上が65歳以上という市区町村は60件、全体の3.4%です。最も高いのは南牧村の65.2%でした。
| 順位 | 市区町村 | 65歳以上 | 2025年人口 | 人口増減 (2020→2025) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 南牧村 | 65.2% | 1,273 | -21.0% |
| 2 | 天龍村 | 62.1% | 965 | -18.1% |
| 3 | 神流町 | 61.5% | 1,298 | -21.1% |
| 4 | 金山町 | 60.9% | 1,634 | -12.2% |
| 5 | 御杖村 | 60.5% | 1,226 | -17.1% |
| 6 | 大豊町 | 58.7% | 2,761 | -15.1% |
| 7 | 東吉野村 | 58.3% | 1,281 | -14.7% |
| 8 | 飯舘村 | 57.5% | 1,373 | +4.2% |
| 9 | 上関町 | 56.4% | 1,893 | -19.2% |
| 10 | 上勝町 | 55.9% | 1,193 | -13.6% |
60件のうち、2020年から2025年にかけて人口が増えたのは1件だけです(表では色を変えています)。残りはすべて減っており、中央値は-15.6%、最も減った自治体で-34.0%でした。
母数が小さいほど、率は暴れる
ここまでの上位・下位に共通しているのは、人口の少なさです。人口規模で区切って、高齢化率の散らばりを比べます。
| 人口規模 | 件数 | 中央値 | 最小 | 最大 | 幅 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5千人未満 | 319 | 42.4% | 10.3% | 65.2% | 55.0pt |
| 5千〜1万人 | 245 | 39.2% | 19.6% | 53.6% | 34.0pt |
| 1万〜5万人 | 672 | 35.6% | 17.9% | 54.6% | 36.7pt |
| 5万〜20万人 | 374 | 29.6% | 14.6% | 43.6% | 29.0pt |
| 20万人以上 | 130 | 26.9% | 16.7% | 36.0% | 19.3pt |
人口が少ないほど中央値が高く、かつ幅が広くなります。ランキングの端に小さな自治体ばかりが並ぶのは、そこで何か特別なことが起きているからとは限りません。母数が小さければ、率は同じ人数の増減で大きく動きます。
人口10万人以上に限って高い順に並べると、顔ぶれが変わります。
| 順位 | 市区町村 | 65歳以上 | 2025年人口 | 人口増減 (2020→2025) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 小樽市 | 41.2% | 100,404 | -9.8% |
| 2 | 大牟田市 | 37.6% | 101,941 | -8.4% |
| 3 | 一関市 | 37.0% | 101,916 | -8.9% |
| 4 | 尾道市 | 36.5% | 120,346 | -8.3% |
| 5 | 函館市 | 36.0% | 230,498 | -8.2% |
| 6 | 岩国市 | 36.0% | 119,618 | -7.4% |
| 7 | 今治市 | 35.8% | 141,735 | -6.6% |
| 8 | 下関市 | 35.8% | 237,892 | -6.7% |
最も高い小樽市でも41.2%で、50%を超える自治体は1つもありません。8件すべてで人口が減っています。
同じ県内でも、位置はばらばらになる
原発事故で避難指示が出た福島県の市町村を、高齢化率の低い順に並べます。順位は1,740市区町村中の、高い順の順位です。
| 市町村 | 65歳以上 (2020) | 高い順の順位 | 2010年人口 | 2025年人口 | 2010年比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 大熊町 | 10.3% | 1740位 | 11,515 | 1,534 | 13.3% |
| 富岡町 | 24.2% | 1604位 | 16,001 | 2,890 | 18.1% |
| 広野町 | 29.7% | 1274位 | 5,418 | 4,783 | 88.3% |
| 浪江町 | 32.2% | 1063位 | 20,905 | 2,573 | 12.3% |
| 楢葉町 | 37.8% | 623位 | 7,700 | 4,543 | 59.0% |
| 葛尾村 | 47.1% | 111位 | 1,531 | 419 | 27.4% |
| 川内村 | 48.0% | 95位 | 2,820 | 1,705 | 60.5% |
| 飯舘村 | 57.5% | 8位 | 6,209 | 1,373 | 22.1% |
同じ経緯をたどった市町村が、高齢化率という1つの指標の上では1,740件の端から端まで散らばります。避難指示の解除時期、戻った世代の構成、もともとの人口規模が違うためです。この表を高齢化率の順に並べる限り、そこに共通の事情があることは見えません。
この記事のデータについて
- 年齢の内訳と人口で、調査年が5年ずれています。高齢化率は2020年国勢調査、人口と増減率は2025年国勢調査の値です。2020年以降に人口構成が変わった自治体では、実際の高齢化率は表の値と異なります。
- 政令指定都市の区と東京都特別区部の集計値は母集団から除いています。市と区を両方数えると人口が二重に計上されるためです。この記事の母集団は1,740市区町村です。
- 双葉町は2020年国勢調査に該当する数字がなく、この記事の集計に含まれていません。
- 「率が低い=良い」「率が高い=悪い」という意味づけは、この記事では行っていません。数字は状態を示すだけで、その良し悪しを含みません。
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データそのものは人口推移マップで市区町村ごとに確認できます。