「若い街」には2種類ある

2026-08-09 公開 / 使用データ: 総務省「国勢調査」(人口・世帯数は2025年/年齢構成は2020年)・総務省「市町村税課税状況等の調」2023年度

「高齢化率が低い=若い街」。当サイトにも高齢化率が低い順のランキングがあります。1位は東京都中央区で、65歳以上の割合は14.6%。全国で最も高齢者が少ない自治体です。

ただし「高齢者が少ない」ことと「子どもが多い」ことは、まったく別の話です。

東京都新宿区沖縄県南風原町
高齢化率(65歳以上)19.4%19.6%
15歳未満の比率8.4%20.2%
生産年齢(15〜64歳)72.2%60.2%

高齢化率の差はわずか0.1ポイント。それなのに子どもの比率は2.4倍違います。同じ「若い街」として並ぶ2つの自治体の中身は、まったく違うものでした。

高齢化率が低い30自治体を、子どもの比率で並べ直す

人口1万人以上の市区町村を高齢化率の低い順に30並べ、15歳未満の比率を添えました。

緑 = 15歳未満が15%以上青 = 15歳未満が12%未満

高齢化率が低い市区町村 上位30(人口1万人以上)
順位市区町村高齢化率15歳未満生産年齢1世帯
あたり
所得分類
1東京都中央区14.6%13.6%71.7%1.83780.8万中間
2東京都千代田区16.4%13.5%70.2%1.791121.3万中間
3東京都港区16.7%13.3%69.9%1.781396.8万中間
4埼玉県戸田市17.0%14.3%68.7%2.08390.8万中間
5愛知県長久手市17.2%16.9%66.0%2.27465.2万子どもが多い
6千葉県浦安市17.7%12.6%69.7%2.05481.1万中間
7福岡県粕屋町17.9%17.9%64.2%2.28340.4万子どもが多い
8埼玉県和光市18.0%13.6%68.5%2.04410.7万中間
9福岡県新宮町18.4%20.7%60.9%2.61376.1万子どもが多い
10東京都渋谷区18.6%9.4%72.0%1.571073.7万子どもが少ない
11愛知県みよし市18.6%14.5%66.9%2.44430.1万中間
12東京都文京区18.7%11.7%69.6%1.76707.2万子どもが少ない
13三重県川越町18.9%14.4%66.8%2.15342.4万中間
14沖縄県中城村19.1%18.2%62.7%2.42311.0万子どもが多い
15三重県朝日町19.2%18.8%62.0%2.55394.1万子どもが多い
16滋賀県栗東市19.2%16.5%64.3%2.45371.4万子どもが多い
17東京都新宿区19.4%8.4%72.2%1.52620.5万子どもが少ない
18山梨県昭和町19.5%15.7%64.8%2.21379.0万子どもが多い
19東京都目黒区19.5%11.0%69.5%1.80716.7万子どもが少ない
20沖縄県南風原町19.6%20.2%60.2%2.62293.1万子どもが多い
21埼玉県朝霞市19.6%13.6%66.8%2.16394.8万中間
22愛知県高浜市19.6%15.3%65.1%2.39355.5万子どもが多い
23東京都豊島区19.6%8.8%71.6%1.62495.9万子どもが少ない
24沖縄県宜野湾市19.8%16.7%63.5%2.14306.6万子どもが多い
25石川県野々市市19.8%14.6%65.6%2.10335.3万中間
26茨城県つくば市19.8%14.4%65.8%2.15427.1万中間
27東京都品川区19.8%11.1%69.0%1.73557.0万子どもが少ない
28沖縄県豊見城市19.9%19.4%60.7%2.52304.6万子どもが多い
29東京都中野区20.1%8.5%71.4%1.61466.5万子どもが少ない
30愛知県知立市20.2%13.5%66.3%2.19385.2万中間

色が偏っています。青(子どもが少ない)は7件すべてが東京23区緑(子どもが多い)は11件で、沖縄・福岡・愛知・三重・滋賀などに散らばっています。東京23区は1つも入っていません。

違いは「1世帯あたり何人住んでいるか」に出る

表の右のほうに、1世帯あたりの人数を入れておきました。ここに答えが出ています。

グループ1世帯あたり15歳未満生産年齢一人当たり所得
子どもが少ない(7件・すべて東京23区)1.66人9.8%70.8%662万円
子どもが多い(11件)2.41人17.8%63.1%354万円
(参考)全国2.15人

最小は東京都新宿区1.52人、最大は沖縄県南風原町2.62人。全国平均が2.15人ですから、片方は明らかに単身世帯が中心、もう片方は家族世帯が中心です。

この30自治体の中では、1世帯あたり人員と15歳未満比率の相関係数は r = +0.923。統計としてはきわめて強い関係です。「若い街」の若さの中身は、世帯の人数を見ればほぼ言い当てられる、ということになります。

⚠ ただし、この関係は全国では成り立ちません。

同じ計算を人口1万人以上の1,176市区町村すべてで行うと、相関は r = +0.225 まで落ちます。

理由は、地方には世帯人数は多いのに子どもは少ない自治体がたくさんあるからです。高齢の親と同居する多世代世帯は人数が多くなりますが、子どもの数とは関係ありません。「1世帯あたり人員が多い=子どもが多い」は、高齢化率が低い自治体に限った話です。

所得も倍近く違う

2つのグループは、一人当たり課税対象所得も大きく違います。子どもが少ないグループが平均662万円、子どもが多いグループが354万円。およそ1.9倍の差です。

もう1組、分かりやすい対比を挙げます。

東京都渋谷区福岡県新宮町
高齢化率18.6%18.4%
15歳未満の比率9.4%20.7%
1世帯あたり1.57人2.61人
一人当たり所得1073.7万円376.1万円

高齢化率はほぼ同じ。しかし所得は2.9倍、子どもの比率は逆に2.2倍。「若くて所得が高い街」と「若くて子どもが多い街」は、ほとんど重なりません。実際、この30自治体の中で所得と15歳未満比率の相関は r = -0.464 と、はっきり負の方向です。

なぜこうなるのか

東京23区側については、データがそのまま説明になっています。生産年齢人口が70.8%を占め、1世帯1.66人。働くために単身で移り住む人が集まっているという構図です。高齢者も子どもも少なく、真ん中の世代だけが厚い。

一方で子どもが多い側には沖縄県の自治体が目立ちます。沖縄県は厚生労働省の人口動態統計で合計特殊出生率が長年にわたり全国で最も高い県です。福岡県の新宮町粕屋町、愛知県の長久手市などは、大都市に近く住宅開発が進んだ地域で、子育て世帯の流入が考えられます。

ただし、誰がどこから移り住んだのかは国勢調査の年齢構成データだけでは分かりません。ここから先は推測です。

この記事の数字を読むときの注意

指標の定義についてはこのサイトの数字を、そのまま信じないでくださいにまとめています。

まとめ

移住先や住まいを「若い街かどうか」で選ぶなら、どちらの若さなのかを確かめてからのほうがよさそうです。

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データ出典

1世帯あたり人員は、当サイトが人口を世帯数で割って算出した値です。相関係数はピアソンの積率相関係数です。子育て世帯の流入に関する記述は、当サイトのデータから直接確認できるものではなく推測を含みます。