「若い街」には2種類ある
「高齢化率が低い=若い街」。当サイトにも高齢化率が低い順のランキングがあります。1位は東京都中央区で、65歳以上の割合は14.6%。全国で最も高齢者が少ない自治体です。
ただし「高齢者が少ない」ことと「子どもが多い」ことは、まったく別の話です。
高齢化率の差はわずか0.1ポイント。それなのに子どもの比率は2.4倍違います。同じ「若い街」として並ぶ2つの自治体の中身は、まったく違うものでした。
高齢化率が低い30自治体を、子どもの比率で並べ直す
人口1万人以上の市区町村を高齢化率の低い順に30並べ、15歳未満の比率を添えました。
緑 = 15歳未満が15%以上青 = 15歳未満が12%未満
| 順位 | 市区町村 | 高齢化率 | 15歳未満 | 生産年齢 | 1世帯 あたり | 所得 | 分類 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 東京都中央区 | 14.6% | 13.6% | 71.7% | 1.83 | 780.8万 | 中間 |
| 2 | 東京都千代田区 | 16.4% | 13.5% | 70.2% | 1.79 | 1121.3万 | 中間 |
| 3 | 東京都港区 | 16.7% | 13.3% | 69.9% | 1.78 | 1396.8万 | 中間 |
| 4 | 埼玉県戸田市 | 17.0% | 14.3% | 68.7% | 2.08 | 390.8万 | 中間 |
| 5 | 愛知県長久手市 | 17.2% | 16.9% | 66.0% | 2.27 | 465.2万 | 子どもが多い |
| 6 | 千葉県浦安市 | 17.7% | 12.6% | 69.7% | 2.05 | 481.1万 | 中間 |
| 7 | 福岡県粕屋町 | 17.9% | 17.9% | 64.2% | 2.28 | 340.4万 | 子どもが多い |
| 8 | 埼玉県和光市 | 18.0% | 13.6% | 68.5% | 2.04 | 410.7万 | 中間 |
| 9 | 福岡県新宮町 | 18.4% | 20.7% | 60.9% | 2.61 | 376.1万 | 子どもが多い |
| 10 | 東京都渋谷区 | 18.6% | 9.4% | 72.0% | 1.57 | 1073.7万 | 子どもが少ない |
| 11 | 愛知県みよし市 | 18.6% | 14.5% | 66.9% | 2.44 | 430.1万 | 中間 |
| 12 | 東京都文京区 | 18.7% | 11.7% | 69.6% | 1.76 | 707.2万 | 子どもが少ない |
| 13 | 三重県川越町 | 18.9% | 14.4% | 66.8% | 2.15 | 342.4万 | 中間 |
| 14 | 沖縄県中城村 | 19.1% | 18.2% | 62.7% | 2.42 | 311.0万 | 子どもが多い |
| 15 | 三重県朝日町 | 19.2% | 18.8% | 62.0% | 2.55 | 394.1万 | 子どもが多い |
| 16 | 滋賀県栗東市 | 19.2% | 16.5% | 64.3% | 2.45 | 371.4万 | 子どもが多い |
| 17 | 東京都新宿区 | 19.4% | 8.4% | 72.2% | 1.52 | 620.5万 | 子どもが少ない |
| 18 | 山梨県昭和町 | 19.5% | 15.7% | 64.8% | 2.21 | 379.0万 | 子どもが多い |
| 19 | 東京都目黒区 | 19.5% | 11.0% | 69.5% | 1.80 | 716.7万 | 子どもが少ない |
| 20 | 沖縄県南風原町 | 19.6% | 20.2% | 60.2% | 2.62 | 293.1万 | 子どもが多い |
| 21 | 埼玉県朝霞市 | 19.6% | 13.6% | 66.8% | 2.16 | 394.8万 | 中間 |
| 22 | 愛知県高浜市 | 19.6% | 15.3% | 65.1% | 2.39 | 355.5万 | 子どもが多い |
| 23 | 東京都豊島区 | 19.6% | 8.8% | 71.6% | 1.62 | 495.9万 | 子どもが少ない |
| 24 | 沖縄県宜野湾市 | 19.8% | 16.7% | 63.5% | 2.14 | 306.6万 | 子どもが多い |
| 25 | 石川県野々市市 | 19.8% | 14.6% | 65.6% | 2.10 | 335.3万 | 中間 |
| 26 | 茨城県つくば市 | 19.8% | 14.4% | 65.8% | 2.15 | 427.1万 | 中間 |
| 27 | 東京都品川区 | 19.8% | 11.1% | 69.0% | 1.73 | 557.0万 | 子どもが少ない |
| 28 | 沖縄県豊見城市 | 19.9% | 19.4% | 60.7% | 2.52 | 304.6万 | 子どもが多い |
| 29 | 東京都中野区 | 20.1% | 8.5% | 71.4% | 1.61 | 466.5万 | 子どもが少ない |
| 30 | 愛知県知立市 | 20.2% | 13.5% | 66.3% | 2.19 | 385.2万 | 中間 |
色が偏っています。青(子どもが少ない)は7件すべてが東京23区。緑(子どもが多い)は11件で、沖縄・福岡・愛知・三重・滋賀などに散らばっています。東京23区は1つも入っていません。
違いは「1世帯あたり何人住んでいるか」に出る
表の右のほうに、1世帯あたりの人数を入れておきました。ここに答えが出ています。
| グループ | 1世帯あたり | 15歳未満 | 生産年齢 | 一人当たり所得 |
|---|---|---|---|---|
| 子どもが少ない(7件・すべて東京23区) | 1.66人 | 9.8% | 70.8% | 662万円 |
| 子どもが多い(11件) | 2.41人 | 17.8% | 63.1% | 354万円 |
| (参考)全国 | 2.15人 | — | — | — |
最小は東京都新宿区の1.52人、最大は沖縄県南風原町の2.62人。全国平均が2.15人ですから、片方は明らかに単身世帯が中心、もう片方は家族世帯が中心です。
この30自治体の中では、1世帯あたり人員と15歳未満比率の相関係数は r = +0.923。統計としてはきわめて強い関係です。「若い街」の若さの中身は、世帯の人数を見ればほぼ言い当てられる、ということになります。
⚠ ただし、この関係は全国では成り立ちません。
同じ計算を人口1万人以上の1,176市区町村すべてで行うと、相関は r = +0.225 まで落ちます。
理由は、地方には世帯人数は多いのに子どもは少ない自治体がたくさんあるからです。高齢の親と同居する多世代世帯は人数が多くなりますが、子どもの数とは関係ありません。「1世帯あたり人員が多い=子どもが多い」は、高齢化率が低い自治体に限った話です。
所得も倍近く違う
2つのグループは、一人当たり課税対象所得も大きく違います。子どもが少ないグループが平均662万円、子どもが多いグループが354万円。およそ1.9倍の差です。
もう1組、分かりやすい対比を挙げます。
高齢化率はほぼ同じ。しかし所得は2.9倍、子どもの比率は逆に2.2倍。「若くて所得が高い街」と「若くて子どもが多い街」は、ほとんど重なりません。実際、この30自治体の中で所得と15歳未満比率の相関は r = -0.464 と、はっきり負の方向です。
なぜこうなるのか
東京23区側については、データがそのまま説明になっています。生産年齢人口が70.8%を占め、1世帯1.66人。働くために単身で移り住む人が集まっているという構図です。高齢者も子どもも少なく、真ん中の世代だけが厚い。
一方で子どもが多い側には沖縄県の自治体が目立ちます。沖縄県は厚生労働省の人口動態統計で合計特殊出生率が長年にわたり全国で最も高い県です。福岡県の新宮町や粕屋町、愛知県の長久手市などは、大都市に近く住宅開発が進んだ地域で、子育て世帯の流入が考えられます。
ただし、誰がどこから移り住んだのかは国勢調査の年齢構成データだけでは分かりません。ここから先は推測です。
この記事の数字を読むときの注意
- 🔴 人口・世帯数は2025年、年齢構成(高齢化率・15歳未満比率)は2020年の国勢調査です。2025年調査の年齢別集計はまだ公表されていません。したがって「1世帯あたり人員」と「15歳未満比率」は5年ずれた年次を並べています。世帯の構成が5年で逆転することは考えにくいものの、厳密な同時点比較ではありません
- 高齢化はこの5年でも進んでいるはずなので、掲載している高齢化率は実際より低めである可能性が高いと考えられます
- 一人当たり課税対象所得は世帯年収ではありません(納税義務者1人あたり・2022年中の所得)
- 人口1万人未満の自治体は、比率が小さな人数の増減で振れるため除いています
指標の定義についてはこのサイトの数字を、そのまま信じないでくださいにまとめています。
まとめ
- 高齢化率が低い上位30自治体は、子どもが少ない7件(すべて東京23区)と、子どもが多い11件に分かれる
- 見分けるには1世帯あたり人員を見る。この30自治体の中では相関 r = +0.923
- ただしこの関係は全国では成り立たない(r = +0.225)。多世代同居の多い地方が別の理屈で動くため
- 「若くて所得が高い街」と「若くて子どもが多い街」はほとんど重ならない
移住先や住まいを「若い街かどうか」で選ぶなら、どちらの若さなのかを確かめてからのほうがよさそうです。
関連ページ
データ出典
- 総務省統計局「国勢調査」2025年(人口・世帯数)/同2020年 不詳補完値(年齢3区分)
- 総務省「市町村税課税状況等の調」2023年度(一人当たり課税対象所得)
- 厚生労働省「都道府県別にみた合計特殊出生率の年次推移」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/brth4.html
1世帯あたり人員は、当サイトが人口を世帯数で割って算出した値です。相関係数はピアソンの積率相関係数です。子育て世帯の流入に関する記述は、当サイトのデータから直接確認できるものではなく推測を含みます。