「所得の割に土地が安い街」を計算したら、指標が壊れていた

2026-08-10 公開 / 使用データ: 総務省「市町村税課税状況等の調」2023年度・国土交通省「地価公示」2026年・総務省「国勢調査」2025年

移住先を数字で探すなら、こう考えたくなります。収入に対して土地が安い街はどこか。

当サイトには所得のデータも地価のデータもあるので、割り算するだけです。一人当たりの課税対象所得を、その市区町村の地価の中央値(1m²あたり)で割る。「年収1年ぶんで何m²の土地が買えるか」という指標になります。

人口3万人以上の708市区町村で計算しました。

年収で買えるm² 上位12(人口3万人以上)
順位市区町村年収で
買えるm²
一人当たり
所得
地価
中央値
人口人口増減高齢化率
1茨城県鉾田市317295.7万円9,340円43,386-5.6%34.1%
2福島県白河市306318.1万円10,400円55,388-6.9%29.7%
3秋田県潟上市305264.4万円8,680円30,257-4.6%35.5%
4北海道稚内市297344.7万円11,600円30,068-10.4%32.9%
5茨城県稲敷市272287.2万円10,575円35,390-9.3%36.9%
6北海道滝川市261294.9万円11,300円35,845-9.2%35.4%
7鹿児島県指宿市253261.4万円10,350円35,839-8.1%39.6%
8北海道登別市248288.1万円11,600円41,991-9.5%37.4%
9福岡県嘉麻市236255.4万円10,800円31,909-10.0%40.5%
10宮城県登米市231272.5万円11,800円69,264-8.9%35.5%
11山梨県北杜市230312.7万円13,600円41,826-5.1%40.0%
12北海道岩見沢市217293.8万円13,550円73,004-7.9%36.5%

1位は茨城県鉾田市317m²。年収1年ぶんで、テニスコート1面を超える広さの土地が買える計算になります。

反対側も見ておきます。

年収で買えるm² 下位5
市区町村年収で買えるm²一人当たり所得地価中央値人口増減
東京都港区3.31396.8万円4,270,000円+4.7%
東京都新宿区3.2620.5万円1,930,000円+3.5%
東京都台東区3.0482.2万円1,600,000円+8.0%
東京都千代田区2.61121.3万円4,330,000円-0.7%
東京都中央区2.1780.8万円3,710,000円+7.5%

最下位は東京都中央区2.1m²。畳にして1.3畳ぶんです。1位とは150倍の開きがあります。

ここまでは、指標として機能しているように見えます。

上位50件を確かめて、手が止まった

上位に並んだ市区町村の人口増減の列を見てください。全部マイナスです。

範囲を広げて確認しました。上位50件のうち、人口が減っているのは50件。50件中50件です。例外がありませんでした。

人口増減の中央値
(2020→2025)
「年収で買えるm²」上位50件-8.02%
人口3万人以上の708市区町村 全体-3.30%

全体の中央値が-3.30%なのに対し、上位50件は-8.02%。全国平均のおよそ2.4倍の速さで人が減っている場所が並んでいたことになります。

相関を取ると、はっきりしました。

この指標は「安さ」ではなく、「需要の無さ」を測っていました。

土地の値段は、そこに住みたい人がどれだけいるかで決まります。だから「所得に対して土地が安い」は、多くの場合「所得の割に、住みたい人が少ない」と同じことを言っています。安さと過疎は切り離せません。

作った本人としては、失敗です。「コスパのいい移住先ランキング」のつもりで作った指標が、実質的に「人口減少率ランキング」になっていました。

条件を足して、作り直す

指標そのものが無意味だったわけではありません。足りなかったのは「人が減っていないこと」という条件です。

人口の減少が5年で2%以内(=ほぼ維持できている)の市区町村に絞ります。708件のうち260件が該当しました。

人口減少2%以内に限った 年収で買えるm² 上位12
順位市区町村年収で
買えるm²
一人当たり
所得
地価
中央値
人口人口増減高齢化率
1宮崎県都城市151282.9万円18,700円160,340-0.2%31.7%
2栃木県さくら市143323.6万円22,600円44,192-0.7%26.4%
3長野県小諸市133342.2万円25,700円40,217-1.9%33.8%
4茨城県坂東市133293.6万円22,100円51,344-1.8%30.3%
5茨城県つくばみらい市118363.0万円30,800円52,070+4.4%27.7%
6三重県いなべ市117325.5万円27,800円44,095-2.0%27.4%
7山梨県南アルプス市115312.5万円27,200円69,250-0.3%27.9%
8石川県能美市111322.3万円29,150円48,473-0.1%26.2%
9三重県亀山市109325.8万円29,800円49,168-1.3%27.0%
10茨城県東海村107365.9万円34,250円37,806-0.2%25.3%
11佐賀県小城市103287.1万円27,750円43,126-1.9%29.0%
12茨城県阿見町103324.4万円31,600円49,689+2.3%27.8%

さらに厳しくして、人口が減っていない(横ばい以上の)市区町村だけに絞ります。該当は118件です。

人口が減っていない市区町村に限った 年収で買えるm² 上位10
順位市区町村年収で
買えるm²
一人当たり
所得
地価
中央値
人口人口増減高齢化率
1茨城県つくばみらい市118363.0万円30,800円52,070+4.4%27.7%
2茨城県阿見町103324.4万円31,600円49,689+2.3%27.8%
3石川県かほく市94296.3万円31,500円36,009+3.2%29.7%
4千葉県袖ケ浦市87350.5万円40,450円65,125+1.9%27.0%
5福岡県筑前町85286.6万円33,700円30,842+4.2%31.2%
6千葉県木更津市84358.6万円42,550円137,149+0.7%27.9%
7福岡県苅田町82315.0万円38,200円37,975+0.8%24.6%
8千葉県印西市82399.2万円48,900円110,400+7.6%23.2%
9鹿児島県姶良市81281.0万円34,700円76,919+0.7%31.5%
10山梨県甲斐市81338.5万円42,000円75,545+0.3%26.3%

条件を足すと、いくら「損」をするか

条件1位年収で買えるm²無条件1位に対して
条件なし茨城県鉾田市(-5.6%)317m²100%
人口減少2%以内宮崎県都城市(-0.2%)151m²48%
人口が減っていない茨城県つくばみらい市(+4.4%)118m²37%

「人が減っていないこと」を条件に加えると、買える面積は63%落ちます。これが、街に人が残っていることの値段です。

それでも118m²は、708市区町村の中央値66m²の1.8倍にあたります。「人が減っておらず、それでいて割安」は、数として少ないだけで、存在はします。

この記事の数字を読むときの注意

指標の定義についてはこのサイトの数字を、そのまま信じないでくださいに、地価の変動率の読み方は人が減っているのに、土地が上がるにまとめています。

まとめ

指標は、作れば測れるわけではありません。出てきたランキングが「何の順位になっているか」を、別のデータで確かめる必要があります。今回は人口増減がその役目を果たしました。

関連ページ

データ出典

「年収で買えるm²」は、当サイトが一人当たり課税対象所得を地価の中央値で割って算出した指標です。公的な指標ではありません。相関係数はピアソンの積率相関係数で、人口3万人以上の708市区町村を対象としています。1畳は1.62m²として換算しました。