事故が多い場所と、人が死ぬ場所は違う

2026-08-10 公開 / 使用データ: 警察庁「交通事故統計オープンデータ」2024年(令和6年)・290,895件

「事故が多い場所は危ない」。当然のように聞こえます。当サイトの事故マップも、地図上に事故の点を打って多いところを目立たせる作りです。

ですが、事故が多いことと、そこで人が死ぬことは、別の話でした。

警察庁のオープンデータ290,895件のうち、死亡事故は2,598件。全体の0.89%、1万件あたり89.3件です。この「1万件あたりの死亡件数」を管轄ごとに出して、件数の順位と並べてみます。

件数トップ10

交通事故 件数の多い管轄 上位10
順位管轄事故件数うち死亡1万件あたり
死亡件数
1東京30,10314548.2
2大阪24,78012650.8
3愛知24,50613956.7
4神奈川20,75010952.5
5福岡18,4739048.7
6静岡17,4418649.3
7埼玉15,83110968.9
8兵庫15,55110466.9
9千葉12,587129102.5
10群馬9,0594650.8

死亡率トップ10

同じデータを、1万件あたりの死亡件数で並べ直します(母数が振れないよう、事故が2,000件以上ある管轄に限りました)。

交通事故 1万件あたり死亡件数の多い管轄 上位10
順位管轄1万件あたり
死亡件数
事故件数うち死亡
1山口237.02,15251
2岐阜236.32,83567
3愛媛236.32,07449
4新潟202.22,67154
5鹿児島181.12,87152
6熊本180.02,94553
7青森171.22,27839
8福島165.33,08651
9三重165.22,72445
10茨城151.56,00591

2つの表に、重なる管轄が1つもありません。

事故件数が全国で最も多い東京(30,103件)は、1万件あたりの死亡件数では48.2件。全管轄で最も低い51位です。最も高い山口(237.0件)とは4.9倍の開きがあります。

事故が2,000件以上ある37管轄で相関を取ると、事故件数と死亡率の相関係数は r = -0.689。はっきりした負の相関です。事故が多い場所ほど、事故あたりで人が死ににくい。

なぜ逆になるのか — 事故の中身が違う

事故を類型別に分けると、理由がはっきり出ます。

事故類型別の件数と死亡件数
事故類型件数件数の割合死亡死亡の割合1万件あたり
死亡件数
車両相互240,10782.5%90935.0%37.9
人対車両38,64313.3%91935.4%237.8
車両単独12,0904.2%73428.3%607.1
列車550.0%361.4%6545.5

事故の83%は「車両相互」——クルマ同士の追突や出合い頭です。ところがこの類型の1万件あたり死亡件数は37.9件しかありません。全国平均の89.3件を大きく下回ります。

対照的なのが「車両単独」です。件数では全体の4.2%にすぎないのに、死亡事故の28.3%を占めています。1万件あたり607.1件で、車両相互の16倍です。

「人対車両」も237.8件と高く、件数13.3%に対して死亡の35.4%を占めます。

都市部で数えられている事故の大半は、渋滞の中での接触や追突です。数は膨大でも、速度が出ていないぶん死には至りにくい。一方で、単独事故や歩行者との事故は件数こそ少ないものの、起きたときに人が死ぬ確率が桁違いに高い。件数ランキングは「事故の起きやすさ」を測っていて、「死にやすさ」は測っていません。

時間帯でも大きく変わる

時間帯別の件数と死亡件数
時間帯件数死亡1万件あたり死亡件数
夜・朝4,024137340.5
50,357888176.3
昼・朝9,1548997.2
夜・夕22,95920488.9
185,341117963.6
昼・夕19,06010153.0

昼の63.6件に対して、夜は176.3件。およそ2.8倍です。最も高いのは夜・朝の340.5件でした。

外れた仮説と、比べられなかったこと

ここまでの話から、「地方は単独事故の割合が高いから死亡率が高いのだろう」と考えました。管轄ごとに単独事故の割合を出して、死亡率との相関を取ってみました。

相関はほぼゼロでした(r = -0.054)。

さらに調べると、比較そのものに問題があることが分かりました。車両単独の割合は東京が19.75%、大阪が0.82%と、桁が違います。しかも東京の単独事故の1万件あたり死亡件数は48.8件で、全国の単独事故(607.1件)とはまったく別物の水準です。

これは管轄によって計上のしかたが違う可能性を示しています。したがってこの記事では、管轄どうしで事故類型を比較することはしません。事故類型の分析は全国の集計にとどめています。

「地方の道は速度が出るから死亡率が高い」という説明は、直感的には正しそうです。しかし当サイトのデータでは裏づけられませんでした。裏づけるには走行速度や交通量のデータが必要で、それは警察庁のこのデータには含まれていません。

この記事の数字を読むときの注意

指標の定義についてはこのサイトの数字を、そのまま信じないでくださいに、絶対数ランキングの読み方については「全国1位」の正体にまとめています。

まとめ

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データ出典

1万件あたり死亡件数は、当サイトが事故件数と死亡事故件数から算出した値です。相関係数はピアソンの積率相関係数で、事故が2,000件以上ある37管轄を対象としています。事故の中身に関する解釈は当サイトによるもので、警察庁の見解ではありません。